
中小企業にとって資金繰りは経営の生命線です。黒字であっても資金ショートによって倒産に至る「黒字倒産」が珍しくないのは、業種ごとに異なるキャッシュフローの構造に原因があります。今回は、北海道にも多い 建設業・運送業・観光業 の3業種を例に、それぞれが抱える「資金繰りの落とし穴」を解説します。
建設業:入金までの“長い谷”に潜むリスク
建設業は「黒字倒産」が最も多い業種のひとつです。その大きな理由は、売上計上から入金までに時間がかかる構造にあります。
- 請求から入金まで60日以上が当たり前
中小建設業では、工事完了後の請求から実際の入金まで30〜60日かかるケースが一般的です。公共工事や大規模案件では3ヶ月以上の入金待ちも珍しくありません。 - 先行支出の負担
材料費や人件費は工事の進行に合わせて先払いが必要です。資金が入る前に支出が続くため、運転資金に余裕がなければ現場を止めざるを得ません。 - 天候や季節要因の影響
北海道の建設業は特に冬季に工事が進まないことが多く、受注や入金が季節に偏る傾向があります。
こうした事情から、利益が出ていても手元資金が尽きてしまう「黒字倒産」の危険が常に潜んでいます。
運送業:先行コストと薄利多売の板挟み
運送業は社会インフラを支える重要な業種ですが、資金繰りは常に綱渡りです。
- 燃料費・人件費が先行する
荷主への請求は月末締めの翌月末払いが一般的。一方で、燃料費や人件費、高速料金などは日々発生し、先に支払わなければなりません。 - 原価高騰と運賃の据え置き
燃料費の高騰や人材不足による人件費上昇が続く中、取引先に運賃転嫁ができず、利益率が低下している会社も少なくありません。 - 車両投資の負担
トラックやバスなどの購入・リース費用も資金を圧迫します。更新タイミングが重なると資金需要が急増し、資金繰りをさらに厳しくします。
このように「薄利多売型のビジネスモデル」に加え「支出先行型」の構造が、運送業の資金繰りを慢性的に圧迫しています。
観光業:借入依存と収益性の低さ
北海道経済を支える観光業も、資金繰り面では特有の課題を抱えています。
- 借入依存度の高さ
中小旅館・ホテルでは、総資産に占める借入金の割合が高く、返済負担が資金繰りを圧迫しています。特にコロナ禍での緊急融資を活用した事業者は、返済本格化を迎えた今、返済負担に苦しんでいます。 - 労働生産性の低さ
宿泊業の労働生産性は製造業の半分以下とも言われ、人件費の負担が収益を圧迫しています。省人化投資が進みにくく、慢性的な人手不足と相まって資金繰りを難しくしています。 - 季節変動の激しさ
観光需要は夏や冬の繁忙期に集中します。オフシーズンは売上が落ち込み、固定費をまかなう資金をどこから確保するかが大きな課題です。
結果として「ピーク時に稼いだ資金をオフシーズンまで持たせる」ための資金管理が欠かせません。
共通する落とし穴:資金繰りの見える化不足
建設業・運送業・観光業に共通するのは、「資金繰り表を十分に作っていない」ことです。小規模事業者では経理担当者を置かず、代表者自身が手書きで管理しているケースも少なくありません。入金・支払いの時期を見える化できていないため、資金不足が予測できずに突発的なショートに陥るリスクが高まります。
まとめ:業種特性に応じた資金調達の必要性
業種によって資金繰りの落とし穴は異なります。
- 建設業 → 長期の入金待ちと先行支出
- 運送業 → 燃料費・人件費など先行コストと低収益構造
- 観光業 → 借入依存と季節変動
これらの構造的な課題を完全に解消することは難しいですが、「資金繰り表で見える化」し、必要に応じて融資やファクタリングを活用することが、安定経営の第一歩です。
特にファクタリングは、借入ではなく売掛金を現金化できるため、融資に比べてスピードと柔軟性に優れています。業種特有の資金ギャップを乗り越える手段として、北海道の中小企業でも注目されています。
ノースファクタリングでは、地域の事業者に寄り添った資金調達サポートを行っています。業種別の資金繰りに悩んでいる方は、一度ご相談ください。