「売上は上がっているのに資金が足りない」
「利益が出ているはずなのに、月末の支払いが重く感じる」
こうした悩みは、北海道の中小企業でもよく聞かれる声の一つです。特に建設業、運送業、卸売業など、入金のタイミングと支払いのタイミングがズレやすい業種では、黒字倒産のリスクが高まると指摘されることがあります。

黒字倒産とは、帳簿上は利益が出ている一方で、現金が不足して経営が続けられなくなる状態を指します。利益よりもキャッシュが重要といわれる理由がここにあります。

この記事では、黒字倒産を避けるために毎月チェックしておきたい3つの数字を取り上げ、資金繰りの改善につながる視点を紹介します。

1. 月末時点の「現預金残高」

最初に確認しておきたいのが、月末時点の現金と預金の合計額です。
黒字倒産は、現金が不足した時点で起こるため、手元の資金量を定期的に把握することが資金管理の第一歩になります。

現預金が十分でも、翌月の支払いが多い場合や売掛金の回収が遅れている場合には、資金繰りに影響が出る可能性があります。単に残高を見るだけではなく、「翌月の支払い予定」とセットで確認すると、より正確な見通しが描きやすくなります。

近年は入金サイトの長期化や、資材費の上昇による仕入れ額の増加など、企業のキャッシュポジションに影響を与える要因も多いため、現状の残高がどれほど余裕を持っているかを月次で整理しておくことが有益です。

2. 回収予定の「売掛金残高」

次に注目しておきたいのが売掛金です。

売掛金が多い場合、帳簿上の利益は増えていても、実際の現金はまだ入ってきていない状態が続きます。特に北海道の建設関連や運送会社などでは、「末締め翌々月末払い」「出来高払い」などの長期サイトが一般的な取引もあり、売上から入金までの期間が長くなりがちです。

売掛金残高を毎月確認することで、

・入金が遅れている取引先
・売掛金が増え続けている原因
・入金と支払いのタイミングのズレ

などが把握しやすくなります。

また、売掛金が一定ラインを超えると資金繰りに負荷がかかるため、自社にとって適切な売掛金のボリュームを把握しておくことも重要です。売掛の比率が高い企業では、回収の遅れがそのまま資金ショートのリスクにつながることもあるため、売掛金の動きを月次で整理しておくことが経営判断に役立ちます。

3. 翌1〜2か月の「支払い予定総額」

資金繰りを考える上で見落とされやすいのが、支払い予定の総額です。
月末の現預金と売掛金だけでは、企業の資金状況を完全に把握できません。翌月に大きな仕入れや外注費の支払いが集中している場合、月初から資金に余裕がなくなるケースもあります。

北海道の中小企業では、冬季の稼働状況や季節要因によって売上が上下することもあり、支払いと入金のバランスが崩れやすい時期があります。さらに、車両や設備の故障、除雪関連費用など季節的な予期せぬ支出が生じることもあるため、支払い予定を前もって整理しておくことは資金繰りに役立ちます。

支払い表を作成し、翌1〜2か月分の予定を可視化することで、月初の状況を見通しながら経営判断を行うことができ、資金不足のリスクを避けやすくなります。

3つの数字を合わせて見ることで資金の動きが把握しやすくなる

上記の3つの数字

現預金残高
売掛金残高
支払い予定総額

これらはそれぞれ単独で重要な指標ですが、3つをセットで確認することで資金の動きをより立体的に理解できます。

例えば、

・現預金が少なく、売掛金が多い
・売掛金の回収が遅く、支払いが先に来る
・翌月の支払いが多く、売上が季節的に減少する

こうした状況が重なると、利益があっても資金が不足しやすくなります。

資金繰りの改善に役立つ対応策

資金不足が予想される場合、早い段階で対応策を検討する企業もあります。
例としては、

・売掛金の早期化
・仕入れや外注費の支払いタイミングの相談
・融資の検討
・ファクタリングによる早期資金化

などが挙げられます。

ファクタリングは、売掛金を早期に現金化する手段のひとつで、入金サイトが長い取引が多い北海道の企業にとって活用事例も増えている傾向があります。資金繰り悪化が深刻になる前に検討することで、事業運営の安定化につながるケースも見られます。

まとめ

売上が順調でも、資金繰りに負荷がかかると黒字倒産のリスクが高まることがあります。

毎月確認しておきたい3つの数字

現預金残高
売掛金残高
支払い予定総額

これらを継続的に把握することで、資金の流れを整理しやすくなり、急な支払いや予期せぬ出費にも備えやすくなります。

企業の状況や業種によって適切なバランスは異なるため、自社に合った資金管理の方法を見つけることが、安定した経営につながると考えられています。